深い森の奥、
月明かりを吸い込んだような光る鱗を持つ白蛇の子ハク。
彼は一族の掟で
大人になる前の一生に一度「三日間」だけ人間に化けることが許されました。
「人間を知り、慈しみの心を持てば、お前はこの山を守る立派な守護神になれるだろう」
そう教えられたハクは透き通るような白い肌の少年に姿を変え、ふもとの村へと駆け出しました。
一日目、はじめての「ともだち」
村の広場では子どもたちが木登りや追いかけっこをしていました。
ハクがおずおずと輪に加わると村の子どもたちは少しも疑わず彼の手を引きました。
夕暮れまで続いた影踏みやかくれんぼ、
分け合って食べたほんのり甘いふかし芋の味、
ハクは冷たい蛇の体では知ることのなかった「誰かと触れ合う温かさ」に胸がいっぱいになりました。
二日目、雨の中の優しさ
二日目は雨の一日となりました。
雨宿りをしているとハクの体が冷えてきました。
寒さで震えるハクを見て、村の子どもたちは自分たちの上着を脱いで、彼を包み込みみんなでくっつき合いました。
「ハクくん、大丈夫? 風邪ひかないでね」
彼らが包んでくれたのは「相手を想う真心」でした。
ハクは人間たちの優しさに触れ、この村が大好きになりました。
三日目、最後の夕暮れと「贈り物」
いよいよ別れの時。
ハクの足元からは少しずつ白い鱗が戻り始めていました。
「ごめんね、僕はもう行かなくちゃいけないんだ」
寂しがる子どもたちにハクは自分の首に巻いていた白い布をそっと解き、一番年上の子の手に託しました。
「これをみんなで大切に持っていて。僕がそばにいる印だよ」
ハクが森の中へ消えていった直後、
子どもたちは驚いて息を飲みました。
預けられた布が月明かりの下で銀色の鱗模様に美しく輝き始めたのです。
子どもたちはその輝く布を抱きしめ、いつまでも森の奥を見つめていました。
後にハクに手渡された布を村の老人が見ると、
それはただの布ではなく、真珠のように光り輝く
見たこともないほど立派な「蛇の抜け殻」でした。
『これはお山の守り神様のものだ……』
老人の言葉に、子どもたちはあの日一緒に遊んだハクの正体を知ったのです
その後の村
約束の三日が過ぎハクは立派な白蛇の姿に戻りました。
白蛇の姿に戻っても彼の心にはあの日浴びた「優しさ」は消えることなくずっと残っていました。
それからというもの、この村には不思議なことが起こるようになりました。
干ばつ知らず: どんなに日照りが続いても村の井戸だけは冷たくて綺麗な水が溢れました。
災厄除け: 村を襲おうとする疫病や悪い獣はどこからともなく現れる大きな白蛇に追い払われました。
子どもたちが大人になり、その孫が生まれても、
ハクから託された「銀色の布」は村の宝として社に大切に祀られており、今でも村には穏やかな風が吹いています。
「三日間だけ、君たちと一緒に笑えたから」
その思い出と恩だけでハクは時を超えて、
今日も村の平和を静かに見守り続けているのです。
おしまい
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